4つの債務整理 それぞれのメリット・デメリット

4種類ある債務整理のどれが自分にとってベストな方法なのか?
法律に詳しくない人が自分で判断するのは難しい問題ですが、専門家である弁護士や司法書士ならば、貴方にとって最善の解決策を見つけ出してくれます。
まずは債務整理の4つの方法のあらましを頭に入れてから相談に行きましょう。

任意整理

任意整理は、元金だけの支払いをする債務整理です。
弁護士などが依頼をうけると、取引開始からの利息を計算します。
引き直し計算と言いますが、元金と利息部分を分けて、原則、利息部分の支払いをしない交渉をします。
金融業者としては、利息による儲けがなくなりますが、貸した元金だけは返してもらえることになります。
この引き直し計算によって、残額を3年間程度で完済できる範囲内の返済額にします。

利息がなくなり、元金だけの返済になることで借金を減額する方法です。

裁判所を通さない

任意整理は、債務整理の中で唯一裁判所が無関係な債務整理です。
金融業者と直接交渉をするだけです。

引き直し計算では、過払い金請求ができるかも同時に確認をします。
このときに過払い金があれば、金融業者に請求を行うと同時に、利息カットの交渉をします。
金融業者が承諾すれば債務整理が完了することから、手間も時間もかからず、一番ニーズが高い方法です。

ただし、他の債務整理と比較して返済額は大きくなります。
それでも、3年間で完済をしてしまうと、金融業者も納得した契約になりますので、その後の返済がゼロになります。
利息だけ支払わない債務整理です。

特定調停

最初に断っておきますが、現在、特定調停による債務整理はあまり現実的な方法とは言えません。
弁護士も司法書士も、特定調停をすすめるところはまずないと言っていいでしょう。
それを理解した上で、参考までにお読みください。

任意整理の裁判所版

特定調停は、裁判官1人と調停委員2人から構成される調停委員会が間に入って交渉することで借金減額をしてもらう方法です。
調停は調停委員会の主導で進められるため、法律に明るくない人でも進めることはできます。
いわば任意整理の裁判所バージョンといえるでしょう。

任意整理との違い

では、特定調停と任意整理との違いはどこにあるのか、というと、任意整理では利息カットだけでしたが、特定調停では、もっと大幅に元本も減額してもらうよう交渉することができます。
延滞などにより既に給料の差し押さえをされている人も、特定調停を始めることで差し押さえを解除できます。

すべての債務ではなく特に返済が大きいものだけを債務整理したい、とか、保証人がある借金はきちんと返済をしたいなどの選択ができる点は任意整理と同様です。

デメリットの方が大きい特定調停

弁護士に依頼しないことで着手金などの費用がかからずに済みますが、反面、自分の力で手続きをしたり、提出書類を揃えたりする必要があります。
また、裁判所により選任される調停委員の費用は調停を申し出た本人の負担になるため、決して「費用のかからない方法」ではありません。

調停の度に裁判所に出向く必要があるため、平日に仕事をしている人はその度に休みを取らなければなりません。
申立が完了するまでは債権者からの督促をストップすることもできません。
特定調停では過払い金返還請求もできません。

ちなみに、ピーク時の平成15年(2003年)には54万件以上の申立があった特定調停ですが、その後、年々減少し、平成26年(2014年)にはなんと3,358件にまで減少。成立率も申立件数のわずか3%しかないという状況です。

債務整理を検討している人は、よほどの理由がない限りは他の3種類の方法から選択することをおススメします。

個人再生

個人再生は特定調停同様に利息だけではなく、元本も大幅にカットして、借金減額ができます。
最大の特徴は、住宅ローンがそのまま温存される、つまりローンを返済中の持ち家を手放さなくても済む「住宅資金特別条項」があることです。

住宅資金特別条項

債務整理とは、借金返済ができない人が、どうしても減額をしてほしいと金融業者などに申出をすることで成立をします。
しかし、現在住宅ローンを払っている持ち家だけは手放したくない、という人もいることでしょう。

他の借金が減額できれば住宅ローンを払っていくことができる…

しかし、債権者の側からすれば、

家を競売してしまえば借金も返済できるだろ

とか、

住宅ローンだけ払えるって、どういうことよ?

と言いたくなる気持ちもわからないではありません。

そんな時に、マイホームだけはなんとしてでも手放したくない人の味方になってくれるのが、個人再生の住宅資金特別条項です。

住宅資金特別条項は、住宅ローン等の住宅資金貸付債権については従来通り(又はリスケジュールして)支払うことによって、マイホームを手放さないまま、その他の借金だけを個人再生によって減額・分割払いとすることができる制度です。

基本的には借金を大幅カット

特定調停も個人再生も収入が安定していて、3年間で完済可能な金額までの圧縮が目的になります。

個人再生では借金を5分の1(最低金額100万円)まで減額することができます。仮に1,000万円の借金を抱えているとしたら、5分の1の200万円に減額できるということです。

ただし、個人再生では住宅ローン以外の借金が全て一律に対象になるので、保証人のいる借金の場合はその保証人に影響が及ぶことになります。

自己破産

自己破産は借金がなくなる債務整理です。

破産とは、財産を処分して債権者に配当することを言います。
しかし、処分する財産がない場合、または、処分したとしても借金がある場合は、免責と言ってそれ以上の返済をしなくても良いと判断されます。

自己破産とは、この破産の手続きと免責の手続きを同時に行うことで、結果的に返済しなくても済む方法になります。

返済できない理由

自己破産は誰でもできる債務整理ではありません。
どんな借金にしても、返済ができるのであれば、任意整理や個人再生といった他の方法で債務整理が行われます。

しかし、リストラや倒産で収入が激減、生活していくのが精一杯などの理由で、借金減額では追いつかない場合の選択が自己破産です。

1,000万円の借金があっても、返済ができるだけの収入があれば、自己破産はできません。
反対に100万円の借金だとしても、返済できる収入がなければ、自己破産ができます。

弁護士依頼のメリット

弁護士に自己破産の依頼をした場合には、そこに至った経緯の説明と財産の内容、生活費などの細かな書類の提出が必要になります。
弁護士には何事も包み隠さず、誠実に打ち明けましょう。

もちろん費用はかかりますが、自分で裁判所に提出するための書類を揃えようとするのはとても難しく、大変な作業になります。
弁護士に依頼すると、必要書類の指示があり、提出書類も作成してくれます。

弁護士からの受任通知によって債権者からの請求が止まり、精神的な負担も軽減されます。

費用は分割・積立にも対応

自己破産の弁護士費用は50万円前後かかります。
高いと感じられる方も多いですが、内容が煩雑な上に期間もかかります。

とはいえ、誰もがお金に困って相談に訪れているわけですから、即金で費用を払える人は多くはないでしょう。
そんな人のために、多くの弁護士事務所では分割払いにも対応しているので、即金で払えなければお断りということはありません。

弁護士や司法書士に債務整理を依頼したら、受任通知を債権者に送付することで返済請求がストップします。
その時点から、それまで借金返済していた分を積み立て、費用がたまったら債務整理の手続きを開始することで、その後の負担を減らすよう配慮してくれる法律事務所もあります。
時間は多めにかかりますが、債権者からの取立てがなくなるため、積立て方式は精神的にかなり楽な方法だといえるでしょう。

借金がゼロになる自己破産では、経済的な不安ばかりではなく、精神的な不安からも解放されます。

4つの債務整理の特徴一覧

それぞれの特徴とメリット・デメリットを一覧にしてみました。

債務整理 特徴 メリット デメリット
任意整理 裁判所を介さない
債権者と交渉
利息カット
3年を目途に返済計画
手間と時間がかからない
官報に載らない
利息カット
整理対象を選択可
職業制限がない
財産を維持できる
元本は返済
減額は少ない
過払い金返還請求可能
特定調停 裁判所に申立
調停委員会が調停
利息カット
元本の減額も可
3年を目途に返済計画
調停委員が調停
官報に載らない
利息カット
元本も減額可
整理対象を選択可
職業制限がない
手間と時間がかかる
申立完了まで督促は止められない
申立の成立率3%
過払い金の返還請求不可
個人再生 裁判所に申立
3年を目途に返済
借金は大幅に圧縮(原則5分の1、最低金額100万円)
職業制限がない
住宅資金特別条項
手間と時間がかかる
官報に記載
保証人にも影響
自己破産 裁判所に申立 借金帳消し 手間と時間がかかる
官報に記載
保証人にも影響
20万円以上の価値がある財産は原則すべて処分
職業制限

債務整理はいずれも原則的には自力でできますが、専門家である弁護士・司法書士に依頼するメリットはとても大きなものがあります。

弁護士費用で不安な方は法テラスでも相談ができます。
年収によっては、立替や弁護士費用の減額の相談にも対応しています。

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